多読とは、やさしい英語を辞書なしで大量に読む学習法です。社会人が挫折する理由はほぼひとつ
——難しすぎる本を選んでいること——に集約されます。
多読の基本データ
多読の効果が出始めるまでには、一定の語数の蓄積が必要です。以下のデータは、多読実践指導の第一人者・古川昭夫先生の研究と、SSS多読研究会の基準にもとづいています。
精読と多読の違い
学校英語の読み方(精読)と多読の違いを整理します。どちらが優れているかではなく、それぞれが作用する能力の違いを確認することが目的です。
比較項目
| 比較項目 | 精読(学校英語) | 多読 |
|---|---|---|
| 辞書の使用 | 引く(推奨) | 引かない(禁止) |
| わからない箇所 | 立ち止まって解決する | 飛ばして前へ進む |
| 日本語への翻訳 | 行う | 行わない |
| 1時間のインプット量 | 約500語 | 約3,000語 |
| 作用する能力 | 明示的知識(文法・語彙の意識的処理) | 暗示的知識(英語を英語で処理する回路) |
| テキストの難易度 | 背伸びしたレベルでも可 | 理解率95%以上のやさしいレベルのみ |
社会人が多読で挫折する原因
多読を始めた学習者の大多数が2週間以内にやめます。原因を3つに分類できます。
本を選ぶ 理解率が95%を下回ると辞書が手放せなくなる
見えない 語数を記録しないと蓄積実感が生まれない
読み続ける 楽しくない本を最後まで読もうとしてしまう
多読が向く人・向かない人
- 英語を読む速度を上げたい
- 長期的に運用力を育てたい
- 通勤・休憩の隙間時間を使いたい
- 英語を英語のまま理解したい
- 毎日少しずつ積み上げるのが得意
- 3ヶ月以内にTOEICスコアを上げたい
- すぐに会話力が必要な状況にある
- 難しい英文を精密に読む仕事がある
- 語数記録などの継続管理が苦手
多読を始めるための3ステップ
ステップ 1:レベルを確認する
洋書を読み知らない単語が1ページに1〜2語以下であることが重要です!
コスモピア社が提供しているeステーションという多読・多聴サイトではYL(読みやすさレベル)という指標があります。YL0は日本語の幼児向け絵本相当、YL1が初級児童書、YL2〜3が中学生向けに相当します。まずYL0〜0.5の本を1冊読み、知らない単語を読み飛ばしても意味が取れるかどうか確認します。意味がつかめなければその本は自分のレベルに合っていないので、すぐに違う本に移りましょう。
ステップ 2:語数を記録する仕組みを作る
読了した本の語数を記録します。ノートでも、スプレッドシートでも構いません。語数が積み上がる可視化が、継続の動機になります。1,000語、5,000語、10,000語と節目を設定すると効果的です。
(eステーションでは、読了後自動で語数カウントしてくれます)

ステップ 3:レベルに合った洋書をどんどん読み進める
多読をするなら、紙の洋書よりもスマホやタブレットで読む方が圧倒的に効率的です。
最近ではメルカリなどを使えば洋書を安価に入手できるようになりましたが、多読という観点では紙の本には限界があります。特に初心者のうちは、自分のレベルに合わない洋書を買ってしまい、数ページで挫折してそのまま積読になるケースも少なくありません。その点、アプリやKindleであれば、レベルに合った本をすぐに選べ、コスト面でも、1冊1,000円以上する洋書を何冊も購入するより、月額1,000円未満で何万冊もの洋書に触れられる方が圧倒的に効率的です。
現代において多読を実践するなら、スマホやタブレットを活用した読書が最適な選択です。
月額880円 / 2,000冊以上読み放題 / 語数カウント自動記録 / YL別分類。古川昭夫先生(多読実践指導)監修。
eステーションを確認する ※ 実際に使用しているサービスのみ掲載しています筆者が高校で英語教員をしていたころ、単語の暗記、関係代名詞や仮定法など、いわゆる「正しい英語」を教えていました。しかしどれだけ丁寧に教えても、生徒はまったく英語が伸びませんでした。生徒は試験のために文法と単語を暗記。テストで満点を取った生徒も英語を一言も話せません。英語を外国人とのコミュニケーションのためとか自分が興味があるからとか、そのような理由ではなく、義務教育の一環でやらされているだけでした。「英語を知識として教えるだけでは不十分」です。
多読は自分のレベルに合ったコンテンツを、大量にインプットするので、英語を英語のまま処理する回路が育ちます。
よくある疑問
中学で習う1,200語は最低限必要です。ただし、1,200語に満たなくても知っている単語のみで構成されたコンテンツを使用すれば、多読を開始することは可能です。多読では単語の暗記は不要です。同一の語が文脈の中で繰り返し登場することで意味が定着します。子どもが母語を習得する仕組みと同じです。辞書を引く行為は多読の効果を妨げます。
TOEIC Readingのスコアは、多読を始めてから6ヶ月〜1年以上の蓄積後に上昇する傾向があります。短期でのスコアアップを目的とする場合は、多読と並行して問題演習を行うことが必要です。
明治の英語の達人(夏目漱石や福沢諭吉など)は多読のみで英語を身に付けました。その時代はリアルな英語を聞ける手段がなかったため、必然的に多読のみをやったと思われます。現代は、Youtube等で生の英語を聞くことが可能なので、音から意味をつかむ回路を育てたい場合には非常に機能します。どちらも、自分のレベルに合ったコンテンツを使用することで、英語脳が育成されます。
まとめ
- 多読とは、やさしい英語を辞書なしで大量に読む学習法
- 社会人の多読挫折の大半は「難しすぎる本を選ぶ」というレベル選定ミスが原因
- 知らない単語が1ページに1〜2語以下の本を選ぶ
- 語数を記録することが継続の仕組みとして機能する。100万語が長期目標の基準
- 多聴は音から意味をとる回路を養う。

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